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春から夏にかけて

今年の春か夏あたりに混浴オフ会を開きたいと思います。
和歌山県の那智勝浦温泉に行く予定です。

一緒に参加したいカップルさん募集中です。
メッセか書き込みお待ちしております。
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あさぎ作小説「終末カグヤ」⑰とあさぎ屋外ヌード

S1070003修正後

夕刻が、最後の断片を、割られ放題の黒い峰へと押し殺した。視界はすっかり薄暗く、ただ月の光は熱狂的なほどまぶしく、地上のものを温度なく燃え上がらせた。
 いいとこがあるんだ。そう、榊は言った。トモカはその誘いのまま、卯野と幼い絢子とに手を振って〝秘密基地〟を出てきた。あの土手の奥、草の下、そもそも隠れることが、有意味なのかはわからない。何にもない山を突然破壊する連中がいるのだから、見つからないようにしていても、いずれはやられてしまうかもしれない。夏休みの思い出が、三十一日の刻限で柔らかく閉じ、時間の樹脂細工の底へ沈むように。
榊の背へ着かず離れず歩くと、あの遠景に見えていた廃墟の都市が、徐々に近くなる。風が丁度よい湿潤を含んで、尖った草の葉先をちらちらと煽る。亡霊の淡くあえかな体は、かつての黒々とした偉大な石の業をはっきりと現してゆき、いくらかあとには、周りに崩れ去ったコンクリートの巨塊、砕かれた道路の骸が点在するようになった。焦げた鉄骨が飛び出し、名も知らない細長い草が群がり、痩せた穂を月光に音もなく揺すっている。二人は、ただ夜の息を吸って、一定の調子で、ただ歩く。呼吸するたびに心臓の奥まで、月光が混入してくるようだった。
 人の気配は、なかった。または隠れ潜んでいるのか。足の遥か底から、何知れぬ微かな振動が、時折響く。月下の目の迷いで、崩落した建物群の間に一瞬、黒い人影が見えることもあった。二人の足音は土から石へ、割れ目と小石を越えて、台風で根こそぎに鳴った化石の巨木のような、高層ビルの跡を曲がった。
「……ついた。ここだ。いいだろ」
 榊が指差した先には、廃墟の折れた柱たちが、一種の遺跡のように不思議な均衡を保って、高く低く立ち並んでいた。柱の数本は斜めに切れ、その断面には土が積もって、例の細長い草や、夜露を含んだ薄黄色の小花が根付いている。端の柱には、蜘蛛が、弱々しい巣を張っていた。その透明質の織物にも夜の光は溜まり、トモカは指されるままに石柱の中央へと進んで、小さく声を洩らした。
そこには、ビルの天井が半分に切られて崩落し、一メートルほどの深さにはまり込んだらしい、平たい穴があった。穴は天然の泉になり、今は床板になった天井板の割れ目の深い隙間から、気泡と、陽炎が踊るような対流の動きとが立ち上っている。月球が手に取れそうに映って真珠色の波を立て、水面には温かな白い湯気があった。「お湯……」トモカは、警戒しながら水面に手を差し入れてみた。少しぬるいが、湯質の滑らかな無色の鉱泉が肌へ快く、微かに硫黄のにおいがした。榊は、トモカの背中の曲線を見、それからあさっての空へと目を逸らした。
「入らないか? ……何、俺は見ない。この石柱の後ろで、見張りをしてる。といっても、のぞきなんか来ないだろうけどな。気にせずに、ひと風呂浴びるといい。元々スーパー銭湯でも造るために掘った跡地なのか、〝あいつら〟の攻撃が湯脈を刺激したのかは知らないけど、俺は、結構上等だと思う。体を拭く布だったら、粗末だけど、卯野のとこから借りてきといた」
「……」
 トモカは、榊が自分を介抱してくれたであろう昨日を、思い描いた。無防備に眠っている自分を造作なく、ごく自然に扱った榊だから、「見ない」と言った限りは見ないだろうと思われた。それが頼もしく、またどこか寂しくもあった。だからといって積極的に見てほしいわけでもなく、複雑に唇を曲げながらも、気は目の前の〝温泉〟に惹きつけられていた。人為の明かりが悉く抹消された、遠く暗く凝った深海のような宇宙が、頭上に余りにも広い。その闇を銀色の隣人が漂い、惜しげもなくわくわくと輝く波を振らせ続けて、地球の水蒸気の爽やかな青さを、海ほたるの燐光のように燃やす。真下の廃墟のただ中に、折れて立ち並んだ石柱と、無残な傷口にも生える草たちと、石柱の影が仕掛け時計のように交錯する、包み込むような湯質の天然温泉と。どれもその青さと銀色との雨に濡れて、水面などはもはや、物質というよりも光波そのもののようだ。
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