FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

自作小説「終末カグヤ」②

――明石市が、六時になりました。
 つけっぱなしのラジオは、時々、橙色のボタンを危うそうに点滅させながら、山を谷を上下する電波をひろい、さびた銀色のボタンの指した曲を受け止め続ける。ちょうど、男が、山にひとにぎり残ったカシロダケの林の頂から降りてくるタケヤネの欠片を拾い上げ、ひとつひとつ伸ばし、乾かし、紡ぐように。
「これは、なに?」
 女は、言葉を失った人のように、一時間近く麻のむしろの上に胡坐をかいて作業する男の手元を見つめ続けていたが、ラジオの時間が六時五分になったとき、質問した。女の口元に溜まった憂いが、影の中にはたはたと零れた。髪は長く黒く、腰まであり、まっすぐだった。腰に麦わら色のベルトをして、襟と裾を銀色で縁どった白いワンピースを着ていた。足は、波間を歩いて来たように、裸足だった。二本的な一重瞼の、整った貌は、まだ二十歳をすぎたくらいに見えた。男は、自分の手元から目を離さないまま、応えた。
「〝セントギガ〟のボットだよ」
「……?」
「ずーっとむかし。〝セントギガ〟って番組があったんだ。時報の一種なんだけど、こうやって二十四時間、日の沈むところや日の昇るところや、……新幹線が動き始めるところや、人々が子午線の順番に目を覚まして、朝の支度したり出かけたりするとこをさ、……それとも日が沈んだり眠っていったり……、そういうのをさ。言い続けるの。ずっと」
 女は、耳を傾けて聞いているうちに、男がいま流れているラジオについて答えていることがわかって、肩を少しすくめた。彼女は男のしている作業について質問したつもりだったが、男は「それ」の指す対象も訊かずに、一方的に返答をする。この男にはそういう、ざらっとした、ぞんざいなような不器用なようなところがあった。

修正後1
スポンサーサイト
コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。