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自作小説「終末カグヤ」③

「……何時何分に、那覇市に日が昇りました、長崎市に日が昇りました、岡山市に、鳥取市に、大阪市に、名古屋市に、群馬市に、新宿に、……全部昇り終わったら、『日本列島は、今、光の中です』って言うんだ。俺は、それが好き」
「うん」
「それで、その合間に、詩をやるの。有名な詩とか、寮みち子って作家が書いた詩とか、……このラジオじたいがさ、その作家が書いてるんだっけか? ラジオの話もかいてるひとだから。とにかくそういうのの、ボット。いまはその局はないし、そこに人もいないだろうから」
 ボットは、ロボットのこと、と女にも何となく伝わる。いまはないラジオ局の放送に似せて、過去に録音された〝セントギガ〟を自律的に繰り返す機械仕掛け。男の言う通り、その局にはもう誰もいないだろう。建物の形をしているかどうかも怪しいかもしれず、また建物はあっても屋根は失われて、赤く重たい鉄塊になった機械たちと捻じ曲がったマイクたち、取れて中のバネがのぞき、そのバネもろとも朽ちかけたボタンたちがあって、尖った壁先から長い沈黙と、夜ごとの星の運行とが見えるのに違いない。
「この電波、どっから来てるのか知らないんだ。どっかの誰かが、これが好きだった奴が、自分でプログラムしてボット造って、流してる。……でも遠くはないどっかから、ずっと聞こえてくるんだ」
「うん……」
 男は、二こ縒りを、十数本編みあげていた。ほどけないように強く、けれど細工しやすいようにかすかの遊びを入れて。天井から太い竹編みの鎖で吊り下げられた、掌大の球形のガラスのランプは、上蓋にLEDを取り付けた仕様で、ランプの下部分は小さな苔の山になっている。苔の山の頂上には小さな竹の盆栽が二、三本植えられ、男が日に二、三度遣る霧吹きの水で潤って、活きている。

修正後2
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