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あさぎ作小説「終末カグヤ」⑥とあさぎ屋外ヌード

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「それ、カシロダケっていうのの皮なの?」
 女は斜めに寝かせた脚を、長いスカートの中に隠した。男の首が、小さく、うなずく。
「そう。……日本には、もう少なくなった。元々、福岡とかにしかなかった竹だしな。こういう細工は、この竹じゃなきゃ、できないんだ。真竹の皮じゃ固すぎる」
「シロ、っていう音のわりには、真っ白じゃないのね。他の竹よりはずっと、白いけど」
「白いよ」
 男は八こ縒りの先をぎゅっと結ぶ。毛の生えた指の関節が力み、弛緩する。
「竹は、もとは、竹の子だろ。……竹の子が被ってる皮をぬいで、成長していくけど、これは先っぽに、その皮を付けたまま伸びていくんだ。だから、立派な竹林の上に、白い、竹皮の屋根ができる。そのタケヤネから、太陽に十分乾かされて、きれいになった皮が、落ちてくるんだ。風で。雪みたいに。……ぱさっ。かそっ。て、……音が、してるんだけど、していないみたいに、落ちてくる……それが白く感じる。そうして降り積もったやつを、俺はいただいて、こうしてつかうんだ」
 女は、部屋の棚の細工物たちを、もう一度眺める。皿と弁当箱との、素朴なフォルム。女は、それをつくるところも、先刻見ていた。裂いた皮の硬い芯を束ね、そこに柔らかな竹皮を螺旋状に巻きつけて太くして、楕円形の底の中央部になるところから巻いていく。一本巻き終わると、男は膝の脇に置いた別の皮を拾い上げて先端を束ね結び、一瞬、さきほどのように用心深く締めてから、次の芯を差し込んで、再び皮を巻き始めるのだった。女は、男の手元に目を戻した。
「十六こ縒り」
 睫の瞬きが、ちらっちらっとゆれた。男はほんのかすか、微笑んだ。
「これは昨日編んでおいたやつだよ」
 男は、ばれんの底を作り始めた。平らに円く切りぬいた薄い板の中央に小さな突起を付け、それを型にして、二つ編みの竹皮を、渦を描くように巻きつける。そのリズムと形は正確で、精密で、男の手はそのように動き、女は数分の間、息をひそめた。
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